痛風・高尿酸血症マニュアル
痛風・高尿酸血症

1.病型分類
 分類  尿酸産生過剰型    20%
     尿酸排泄低下型    70%
     混合型        10%
 
UuA/day(mg) UuA/Ucr CuA/Ccr
産生過剰型 900以上 0.5以上 15%以上
排泄低下型 300以下 0.5以下 5%以下
混合型 300〜900 0.5 5〜15%
スポット尿or24hr 1時間or2時間法

2.病態概念
    尿中尿酸排泄量(UuA)= CuA× SuA
     尿酸クリアランス CuA〜正常値
     6.2〜12.6mg/dl
     血清尿酸値    SuA〜正常値
 ・産生過剰型
 ・産生過剰とは〜尿酸過剰状態
     尿酸クリアランス CuA 正常
     血清尿酸値    SuA 上昇→
     いわゆる高尿酸血症 
 ・尿中尿酸排泄量(UuA)↑= CuA× SuA↑
  ※排泄促進薬はCuAを上昇させる薬
   病型分類をせず産生過剰型の人に排泄
   促進薬を投与すると
   →尿中尿酸排泄量(UuA)が増加して尿
   路系における尿酸の  
    析出を引き起こす。
   →尿路結石や腎障害の原因となる。
・排泄低下型
・尿酸産生  正常
    尿酸クリアランス(CuA)が低下し
    た状態
・尿中尿酸排泄量(UuA)↓= CuA↓×SuA 
     結果的に尿酸値上昇 
※1.合成抑制薬を排泄低下型のひとに投与すると→産生量は低下or正常→血清尿酸値
 (SuA)が正常化しても→・式よりさらに尿中尿酸は排泄量(UuA)は低下した状態 となり→尿酸交換率も著明に低下し尿酸代謝は正常化しない。(ますますクリアランスCuA が低下)
※2.上記の場合尿酸の化学構造が類似し
ているアロプリノ-ル特に代謝産物オキシプリノ−ルも排泄が悪くなり蓄積→副作用として肝機能障害、造血障害(血小板減少)

3.痛風の診断と治療の進め方
・.痛風発作に対する処置
・痛みを止めることが第一・・・NSAIDfirst choice
・血清尿酸値にはあまりこだわる必要性はない。それよりも炎症反応のチェック・・・末梢の単発性の関節炎ではあまり大きな動きはない。
・痛風発作は自然に消腿するので薬は我慢できる痛みで  押さえる程度まで使用。その後減量するよう   に指導。
・抑えられない痛みに対しては短期に限ってステロイド5〜10mg使用、かなりのケ−スで効果あり。
・.痛風発作に対する予知
・痛風発作を繰り返し起こす人は関節炎の予兆を必ず感じると一般的に言われている。
・まずコルヒチン1錠服用し、これで押さえられない場合はNSAIDを使用。
・.痛風発作と尿酸値
・痛風発作時、尿酸値はそれほど高くないかあるいは正常の場合もある。
・メカニズムははっきり分かっていない。痛風発作のきっかけが尿酸値の高さではなく変化、
  つまり尿酸値の急激な上昇、下降でおこりやすい。

★痛風発作を引き起こす尿酸塩結晶の起源
●1.血清尿酸値の急激な低下→滑膜などにすでに沈着している尿酸結晶塩の関節腔内への遊離 
      Crystal Shedding
●2.血清尿酸値の急激な上昇→関節液中の尿酸濃度の上昇に伴う尿酸塩結晶の新生

・.尿酸降下薬の使い方、時期
・急激な尿酸値の下降は発作の誘因となる。
・炎症が完全に治まる時期を待って、患者さんが予知的な投薬方法をマスタ-していることを確認してから、 尿酸降下薬を除々に始める。
・ノ痛風発作が起こってから2〜3週間は原則的に尿酸降下薬を使わず、痛風発作が治まって
から最小量から使用。
・.薬の使い分け
・尿酸合成抑制薬と尿酸排泄促進薬を病型分類によって正しく使い分ける。
・病型分類にて産生過剰の場合尿路に尿酸の負荷をかける尿酸排泄促進薬を使うと、結石、腎障
 害の誘発につながる。→・参照
・排泄低下の場合はいろいろで尿酸合成抑制薬を使用する と尿酸クリアランスはますます低下、
またアロプリノ−ル等の薬を使った場合アロプリノ−ルの活性代謝産物オキ シプリノ−ルの排泄も低下副作用の原因。→参照・
・病型分類はスポット尿でも簡単に決められる。→参照1すなわち尿中のクレアチニンと尿酸値
の比UA/Ucr
    ●産生過剰型〜0.5以上→アロプリノ−ル
    ●混合型  
    ●排泄促進型〜0.49以下→ユリノ−ム

   ※腎結石あるいは石灰化を含めて腎所見がある方には尿酸合成抑制薬を使うことが大事
・.合成抑制薬と排泄促進薬の併用
  ※併用療法のメリットと注意点
・痛風患者の中に尿酸過剰という状態の中に排泄低下というベ−スがあった中に生活習慣に
よる尿酸の産生過剰が起こっている人がほとんどである。
   
・.無症候性高尿酸血症
・現在コンセンサスを得られている高尿酸血症の値は7.0mg/dlと言われている。
・高尿酸値と治療開始の時期はいろんな意見があり、特に無症候性の場合論議をかもし出している。
・他の追従する合併症や併発疾患によっておのずから治療 開始時期は変わってくる。
・.尿のアルカリ薬の使い方
・尿路結石や腎障害を少しでも悪化を予防するために、飲水を多くしたり、尿中の尿酸の溶解量を
増すため尿中のpHをアルカリ性に傾ける必要がある。尿
のpHが5.0の状態と6.5の状態では尿酸の溶解度は10倍
位の差がある。
・一般的な考え方として酸性尿であって原因が産生過剰型あるいは排泄促進薬を使用していよう
と尿中に排泄される尿酸の量が多ければ尿アルカリ薬を
使用して酸性尿を是正する必要がある。

4.痛風、高尿酸血症の合併症
・問題となる合併症として尿路結石や腎障害等であるが、尿酸高値による直接的な原因による要素が高い。特に尿路結石はその性格が強い。
・それ以外の併発疾患あるいは合併疾患の方が問題であり、予後を左右することがある。たとえば動脈硬化関連疾患、高脂血症糖尿病、虚血性心臓病、脳血管障害etc。
・最近若年者の中の高尿酸血症にインスリン抵抗性あるいは内臓肥満といった観点から増え続けている。一般にイン スリン抵抗性の場合尿酸排泄障害を伴いやすい。

5.患者指導のポイント
 生活指導、食事指導はかえってドロップアウトされるよりは多少不完全でも継続性が重要。要は生命予後良く することが目的。


  



藤木クリニック
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